エアコンを購入したら、次に必要なのが取付工事です。しかし、「どのような手順で進めるのか?」「自分でできるのか?」「業者に依頼するとどのくらいの時間と費用がかかるのか?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
エアコンの取付工事は、単に機器を設置するだけではなく、適切な配管や電源の確保、さらには冷媒の処理など、細かい工程が必要になります。
この記事では、エアコンの取付工事の具体的な手順について詳しく解説します。事前に工事の流れを理解しておけば、スムーズな設置ができるだけでなく、トラブルを防ぐことにもつながります。
業者に依頼する際のポイントや、自分で取り付ける場合の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
エアコン取付工事の具体的な手順

エアコンを購入した後、いざ取り付けるとなると「どんな作業が必要なの?」と戸惑うこともあるでしょう。
工事の流れを知っておくと、業者に依頼する際もスムーズに進められますし、「自分でやるべきか」を判断する参考にもなります。ここでは、エアコン工事の基本的な流れを詳しく解説します。
1. 室内機を取り付けるための準備
まず最初に、エアコンの室内機を取り付けるための準備を行います。具体的には、以下の作業を行います。
作業工程 | 内容・ポイント |
---|---|
取付け板の設置 | 壁に室内機を固定するための取付け板を設置 |
配管用の穴あけ(必要な場合) | 配管を通すために壁に穴を開ける(事前に位置を確認) |
室内機の配線確認 | コンセントの種類や電圧をチェックし、適切な接続を行う |
取り付け位置を決める際は、室外機までの配管経路や、電源コンセントの位置を考慮することが重要です。特に、エアコン専用のコンセントがない場合は、別途電気工事が必要となることもあります。
2. 室内機の設置
準備が整ったら、いよいよエアコンの室内機を取り付けます。ここでは、正しく設置しないと配管の向きや配線に不具合が生じる可能性があるため、慎重に作業を進めましょう。
作業工程 | 内容・ポイント |
---|---|
取付け板の固定 | 室内機をしっかり支えるために、壁に安定して固定する |
配管の向きを確認 | 室外機へスムーズに接続できるよう、配管の向きを調整 |
室内機を壁に掛ける | 取付け板に確実に引っ掛け、ガタつきがないか確認 |
配線を接続 | 電源コードとリモコン用の配線を正しく接続し、通電をチェック |
ここで重要なのは、しっかり水平に取り付けることです。傾いていると、ドレンホースからの排水がスムーズに行われず、水漏れの原因になってしまいます。
3. 室外機の設置
続いて、室外機の設置を行います。室外機は、置き場所が限られているため、以下のポイントをチェックして設置します。
設置ポイント | 内容・注意点 |
---|---|
安定した場所に設置 | 地面が傾いていないか確認し、しっかり固定する |
風通しの良い場所を選ぶ | 熱がこもらないよう、障害物のない場所に設置 |
配管の長さを考慮する | 室内機と無理なく接続できる位置に配置する |
また、集合住宅の場合はベランダに設置するケースが多いですが、隣人のスペースに侵食しないように気を付けることも大切です。
4. 配管の接続と真空引き
室内機と室外機が設置できたら、この2つをつなぐ作業へと進みます。エアコンの配管には以下のような部品が含まれます。
名称 | 役割 |
---|---|
冷媒管 | エアコンの冷媒ガスを循環させる |
ドレンホース | エアコン内部の結露水を排出する |
電線 | 室外機と室内機を接続し電力を供給する |
これらの配管を接続し終わったら、「真空引き」という作業を行います。この作業を怠ると、配管内に残った空気や水分がエアコンの性能を低下させる原因になるため、極めて重要な作業です。
5. 試運転で動作確認
すべての接続が完了したら、最後に試運転を行い、エアコンが正常に動作するか確認しましょう。ここで不具合が見つかれば、早めに対処できます。
チェック項目 | 内容・確認ポイント |
---|---|
冷暖房運転の確認 | エアコンが正常に冷房・暖房運転できるかをチェック |
異音の有無 | 室内機・室外機から異常な音がしないか確認 |
排水のチェック | ドレンホースから水が正常に排出されているか確認 |
特に、冷たい風が出ない場合はガス漏れや真空引きが不十分な可能性があります。この段階で問題があれば、すぐに対処が必要です。
エアコン取付工事のポイントと費用・時間の目安
エアコン取付工事は一見シンプルに見えますが、実際には各工程ごとに重要なポイントがあり、専門知識や適切な道具が求められます。
もし「自分で取り付けてみよう」と考えている場合は、これらの作業を踏まえた上で、作業の難易度などを慎重に判断してください。
エアコンの取付工事を予定している方の中には、「どれくらいの時間がかかるの?」「費用の相場は?」と気になる方も多いでしょう。
特に、忙しい方や限られた予算で工事を行いたい方にとって、しっかりとした目安を知っておくことはとても重要です。ここでは、一般的な家庭用エアコンの取り付けにかかる時間や費用について詳しく解説します。

取付工事にかかる時間の目安
エアコンの取り付けに必要な時間は、以下の条件によって異なります。
- 配管を通す壁穴の有無
- 室外機の設置場所(ベランダ・屋根・室外機置き場など)
- エアコンの容量(小型・大型)
- 配管の延長が必要かどうか
- 電気工事が必要かどうか
通常の取り付け作業であれば、工事の目安時間は以下の通りです。
工事内容 | 所要時間 |
---|---|
標準的な取り付け工事(配管や電源が整っている場合) | 約1.5~2時間 |
配管穴あけが必要な場合 | 約2~3時間 |
室外機を屋根や壁面に設置する場合 | 約3~4時間 |
電圧変更や専用コンセント工事が必要な場合 | 約3~5時間 |
ほとんどのケースでは、2~3時間程度で工事が完了します。しかし、配管が長くなる場合や、特殊な設置場所を希望する場合には、作業が長引くこともあります。また、エアコンの交換工事(古いエアコンの撤去と新しいものの取り付け)では、さらにプラス1時間ほど見積もっておくとよいでしょう。
取付工事費用の相場
次に、取付工事にかかる費用について見ていきます。エアコンの工事費用は、標準的な工事に加え、追加作業の有無や地域によっても異なることを理解しておきましょう。
工事内容 | 費用の目安 |
---|---|
標準的な取付工事(配管4m以内) | 8,000~20,000円 |
配管延長(1mあたり) | 2,000~4,000円 |
壁穴あけ(木造) | 2,000~5,000円 |
室外機の屋根・壁面設置 | 5,000~15,000円 |
専用コンセント新設 | 10,000~20,000円 |
電圧変更(100V→200V) | 8,000~15,000円 |
古いエアコンの取り外し・処分 | 3,000~8,000円 |
標準工事のみであれば1~2万円程度ですが、追加工事が必要になるとそれに応じた費用が発生します。特に、建物によっては「専用コンセントがない」「200Vへの電圧変更が必要」などの理由で電気工事が発生し、さらに費用がかかる場合もあるので、事前に確認しておくことが重要です。
スムーズな取付工事のために準備しておくべきこと

エアコンの取付工事を業者に依頼する場合でも、自分で行う場合でも、スムーズに作業を進めるためには事前準備が欠かせません。特に、準備不足のまま工事を始めると「配管を通す穴がなかった!」「コンセントの形状が合わなかった!」など、予想外の問題に直面することがあります。
「これを知っておけば事前にバタバタせずに済んだのに…」と後悔しないために、事前にチェックしておきたいポイントを解説します。
設置場所の確認と準備
エアコンを適切に設置するためには、室内機・室外機の設置場所が本当に適しているかを事前に確認 することが大切です。以下のポイントを押さえておくことで、工事当日にスムーズに作業を進めることができます。
室内機の設置場所チェックポイント
チェック項目 | 確認ポイント |
---|---|
壁の強度 | エアコンの重量に耐えられるかを確認 |
コンセントの位置 | エアコン専用コンセントが近くにあり、電圧(100V/200V)が適合しているか |
配管を通す穴 | 既存の穴を利用できるか、新たに開ける必要があるか |
空気の流れ | カーテンや家具でエアコンの風が遮られないか |
取り付けスペース | 壁の上部に十分なスペースが確保されているか |
特に賃貸住宅の場合は、壁に穴を開ける工事が許可されているかを管理会社や大家さんに確認しておくことが重要です。
室外機の設置場所チェックポイント
チェック項目 | 確認ポイント |
---|---|
安定した地面 | 傾いた場所や不安定な足場に置かない |
排気の妨げにならないか | 風通しの良い場所を選び、壁や物に囲まれていないか確認 |
配管の距離 | 室内機と室外機の配管が無理なく接続できるか |
ドレンホースの排水先 | 結露水が適切に流れるように傾斜を確保 |
近隣への影響 | 騒音や排気が周囲の住環境に影響を与えないかチェック |
最近では、室外機の振動や騒音が近隣トラブルにつながることもあるため、マンションなどでは特に注意が必要です。適切な設置場所を確保することで、快適なエアコン環境を維持しながら、トラブルを防ぐことができます。
使用する電源の確認
エアコンには100Vタイプと200Vタイプがあり、それぞれ適合するコンセントでなければ動作しません。一般家庭では100Vが多いですが、6畳用以上のエアコンでは200Vが必要な場合もあります。
電圧 | コンセントの形状 | 特徴 |
---|---|---|
100V | 100Vのコンセントの形状 | 一般的な家庭用コンセントで使用可能 |
200V | よりパワフルな動作が可能だが、専用の配線が必要 |
エアコン設置予定の部屋のコンセントを事前に確認し、もし適合していない場合は電気工事が必要になります。電気工事には追加費用が発生するため、事前に業者に相談しておきましょう。
配管・ダクトの準備
エアコンの取付工事には、室内機と室外機をつなぐ配管が必要です。新設の場合は標準で約4mの配管が含まれますが、以下の点を確認しておきましょう。
- 既存の配管穴を利用できるか
- 配管を延長する必要があるか(距離が長い場合)
- 配管の取り回しをどうするか
特に、古いエアコンを交換する場合は、既存の配管を再利用できる場合もありますが、劣化や規格違いのために新しい配管が必要になることもあるので慎重に判断しましょう。
自分でエアコン取付工事をする場合のリスクと注意点
「エアコンの取付工事を業者に頼むと高いし、自分で取り付けられたらいいのに…」と思ったことはありませんか?確かに、自分で取り付けができれば費用を節約できるかもしれません。しかし、エアコンの取り付けには専門的な技術と知識が必要であり、不適切な施工をしてしまうと危険が伴うこともあります。
「DIYが得意だからチャレンジしてみたい!」という方のために、エアコンを自分で取り付ける際の主な注意点とリスクについて詳しく解説します。
適切な工具とスキルが必要

エアコンの取付工事には、特別な工具や設備が必要になります。一般的な電動ドリルやドライバーだけでは十分ではなく、以下のような工具が必要になることを理解しておきましょう。
工具名 | 用途 |
---|---|
トルクレンチ | 冷媒管(フレアナット)の締め付けに適切なトルクをかける |
フレアツール | 銅管の端を加工し、室外機と接続する |
真空ポンプ | 冷媒配管内の空気や水分を除去する |
ゲージマニホールド | 冷媒の圧力チェックや真空チェックに使用 |
これらの工具を持っていない場合は、新たに購入する必要があります。結果的に、「工事費を節約しようと思ったのに、工具代で逆に高くついた!」ということにもなりかねません。
正しい取り付けをしないと故障や事故の原因に
エアコンは構造が繊細な機械であり、ひとつのミスが大きなトラブルを引き起こすことがあります。以下のようなリスクがあるため、慎重に考えて取り付けを行う必要があります。
トラブル | 主な原因 |
---|---|
冷媒ガスの漏れ | フレア加工不良や締め付け不足による冷媒配管の不具合 |
水漏れ | ドレンホースの設置不良で排水が正常に行われない |
配線ミスによる故障や火災 | 電圧や配線の誤接続によるショートや誤作動 |
騒音や振動の発生 | 室外機の設置が不安定で振動や異音が発生 |
特に、冷媒ガスが漏れるとエアコンが正常に動作しなくなるだけでなく、メーカー保証も受けられなくなる可能性があります。
「真空引き」ができなければ正常に動作しない
エアコンを設置するとき、「真空引き」という作業が非常に重要です。これは、配管内の空気や水分を完全に抜くことで、エアコンを適切に運転させるためのプロセスです。
- 真空ポンプが必要で、これがなければ作業ができない
- 「エアパージ」(ガス抜き)で代用する方法もあるが、メーカー推奨ではない
- 空気や水分が配管内に残ると、故障の原因になる
一部のDIYサイトでは「エアパージで設置できる」と書かれていることもありますが、安全性や耐久性の面から絶対に推奨されません。
電気工事が必要な場合は資格が求められる
エアコン取り付けには専用の電源(コンセント)が必要になることがあります。特に、新しくエアコンを取り付ける場合、専用回路がないとブレーカーが落ちる可能性もあります。
特に以下の作業は、電気工事士の資格を持っていない人が行うことは違法です。
- コンセントの増設作業
- 電圧の変更(100V → 200V など)
- ブレーカーの変更や配線工事
資格がない状態で電気工事を行うと、感電や火災の原因になることもあるため、絶対に注意しましょう。
失敗した場合のリカバリーが難しい
「やってみたけど失敗した!」という場合、以下のような問題が起こり得ます。
- 誤って配管を折り曲げてしまい、交換が必要になる
- エアコンが正常に動作せず、結局業者に依頼する羽目になる
- メーカー保証が受けられなくなる(DIY施工は保証対象外になることが多い)
特に、冷媒管の接続がうまくできずガス漏れを起こしてしまうと、修理がとても大変です。冷媒ガスを再充填するには専門的な設備が必要になり、場合によっては最初から業者に頼んだ方が安くつくこともあります。
自分で工事するのに向いている人
以上のリスクを理解した上で、以下のような人であれば自分でエアコン工事をするハードルが少し下がるかもしれません。
チェック項目 | 理由・ポイント |
---|---|
エアコン工事の経験がある | 過去に取り付けた経験があれば、作業の流れを把握しやすい |
必要な工具を持っている/用意できる | 真空ポンプやトルクレンチなどの専門工具が必要 |
電気工事士などの資格を持っている | 配線ミスによる火災や感電のリスクを回避できる |
エアコンの仕組みや配管接続を理解している | 冷媒ガスの漏れやドレンホースの不備を防げる |
逆に、「自信がない」「失敗したら不安」「専門的な知識がない」という場合は、無理をせず業者にお願いするのがベストです。
エアコン取付に必要な資格については、経済産業省のサイトで調べてみましょう。
まとめ

エアコンの取付工事は、単純に「取り付けるだけ」の作業ではなく、冷媒管の接続や真空引き、電気工事など専門的な技術が求められる工程が多く含まれています。特に、冷媒ガスの漏れや配線ミスは、エアコンの性能を損なうだけでなく、事故につながる可能性もあります。
もしも「DIYでエアコンを取り付けたい!」と考えている場合は、慎重に準備し、自分のスキルとリスクを十分に理解した上で判断しましょう。万が一失敗すると、余計な修理費用が発生してしまうこともあるため、「少し高くてもプロに頼む」という選択肢も忘れずに検討してください。